ACROSEEDグループ・業務活動レポート
ACROSEED お客様インタビュー ケイラインシップマネージメント株式会社様
ACROSEED お客様インタビュー
「外国人社員の定着のためのポイント」
ケイラインシップマネージメント株式会社 代表取締役社長 久保島氏
●キーワード:『Dryな処遇、Wetな関係』
●日本企業の課題:『優秀な外国人を社長にする覚悟はありますか?』
Q
「外国人の定着のための貴社の取組みをお聞かせください
A
「海運業では、残念ながら船員法の規定により外国人を代表取締役に就任させることはできませんが、ふつうの平の取締役に就任させることはできます。弊社の外国人は主にフィリピン、インド、バングラディッシュです。ほぼみんな弊社の船に乗った経験がある者で、そのため日本の文化への理解は多少ありますが、住環境といったところまではわかりません。」
「フィリピンの人は日本で働くことにあまり抵抗感はなく、むしろ日本で働くことがステータスとなるようです。」
「インドの人の特徴は、子どもの教育に熱心で、家族を大切にする、そして日本で働くことは奥さんの決断が大きいようです。インドは教育水準が高く、日本に行ってもその高い教育を受けさせることができない、またはインターナショナルスクールに通わせてもその高い水準の教育を維持することが困難な状況です。そのあたりが、インドの人が日本で働くことを躊躇させることの要因となっています。
また、船長や機関長クラスのインド人は、インドでは非常にエリート階級で、メイドを数人抱えている生活です。日本ではせいぜい社宅が用意されているくらいで、インドと同様の生活水準を維持することはできません。掃除や洗濯、料理などをほとんどしない奥さまが日本でそうした家事全般をすることは、ステータスが下がることもあり、インド人夫の日本勤務に同伴することは難しいのが実態です。そのため、単身赴任のものも少なくありませんが、家族を大事にするインド人にとって単身赴任は容易ではありません。」
「バングラディッシュの人は、国旗が似ているなどの共通点など、親日家が多いのが特徴です。」
Q
「そうした状況(とくにインド人)でも、日本に来るのはなぜでしょうか?」
A
「キャリアアップです。船員にとって、船上勤務から陸上勤務になるのはキャリアアップとなり、これを最終目標とする人も多くいます。日本で陸上勤務の経験があれば、帰国した際の経歴にもはくがつき、現地であるインドの船舶会社で陸上勤務となる可能性も出てきます。」
Q
「外国人への処遇で御社が取り組んでいることをお聞かせいただけますでしょうか?」
A
「ビザの手続きや区役所の手続き、社宅の手配など手取り足取りしてあげています。こうした手続きは外国人にとって非常に煩雑になりますので、身の回りのことをすべてしてあげています。社宅では家具もすべて完備しています、電気・ガス・水道といった光熱費以外は会社負担となっています。医療費も自己負担の3割を会社で負担しています。医療負担の上限はとくに設けていません。家族全員が歯を治療して帰国したなんてこともありました。
給料は、1年間の船上勤務をした場合とほぼ同額になるように設定し、陸上勤務になったことを理由に極端に給与が下がることを避けています。また、ネット(手取り補償)での支払いで税金も会社が負担し、支払いは為替の問題もあるため現地の銀行振込みと日本の銀行の振込みとに分け、外国人の希望を聞いて振り込んでいます。『今月はいくらを現地の銀行でいくらを日本の銀行で』のようにです。
子女教育手当も支給しています。日本人が外国へ行ったときには、このような手当がつきますので、外国人が日本に来たときも同様に支給しています。つまり、われわれ日本人が外国へ行ったときと同じ処遇にしています。」
Q
「そこまで処遇しても外国人を採用することにメリットはありますか?」
A
「あります。船員はほとんどがインド人の外国人ですので共通の言語は英語です。日本人ではあのように英語で話すことはなかなかできません。陸上勤務でもほとんどの書類は英語になりますので、日本人は辞書を引きながら書類を読んだり作成したりといったようなことがありますが、外国人はそのようなことはありません。海外メーカーとの書類のやりとりも英語ですから、効率性の面からいって外国人を採用するメリットは大きくあります。
採用は現地で行っていますが、優秀な外国人を採用するために現地の大学で「奨励金制度」を行っています。あまり多くはありませんが、いろんな国で現在120名ほどこの制度を使って優秀な外国人の確保に努めています。
Q
「現地での船員採用を行う上での重要なポイントはどのようなところでしょうか」
A
「何日も船の上で生活することになりますので、チームワークが重要です。そうした団体生活に馴染めるかどうかの協調性は必要です。」
Q
「外国人の定着という視点で、このポイントが重要だというのがあればお聞かせください」
A
「やはり、信頼関係でしょうか。
弊社の社員の8‐9割は海外勤務の経験者です。そのため、自分たちが海外に行って困ったことなど、自身の経験上わかるんですね。海外に来たときのその人の気持ちがわかるんです。その経験から〇〇へ行ってという指示も、あっ、あそこの業務は日本語だけだから行ったら困るかも、みたいにです。
日本人と同じ処遇という意味で、子どもが生まれればきちんと“のし袋”に入れて出産祝いをあげています。外国人がそのような袋に入ったお祝いをもらうことはありませんし、家族を大事にするインド人にはとても喜ばれます。」
Q
「お話しの初めのほうは、外国人の定着のためには手厚い処遇が必要かと思ったのですが、お話しを伺っているうちに、単にそうではなく、相手の立場に立ってその人の気持ちを理解することが大変重要であり、貴社では社員の海外勤務の経験が非常に役立っているようですね。」
A
「処遇は処遇でDryに行いますが、社内での待遇や接し方など関係はけっこうWetです。
人種や宗教、容姿の違いを理解することも大事ですが、相手の立場になって気を使い、手取り足取りしてしっかりサポートしてあげることがもっと重要です。」
Q
「外国人を定着させるために、最大の問題は何でしょうか」
A
「プロモート(昇進)です。いくら優秀といっても、実際には部長クラスや取締役まで昇進させることは実質上なかなかできません。会議などを英語で行うといったことも考えられますが、現実問題そこまで行うことはありません。また、年に1度は評価して点数化していますが、部署に区分された職場で外国人が突出して個人の成果を上げることは、組織上ほとんどできません。そうしたところからもやはり部長や取締役まで昇進させることはほとんどありません。マネージャークラスに就かせることはありますが、大きな権限まで与えているというわけではありません。
日本企業で外国人を社長にすることは、実質上なかなかできません。外国人を社長にする覚悟はありますか、ということです。そこが日本企業の大きな問題点だと感じています。
グローバル企業へ成長していくためにはそのような取り組みも必要になってくることもあるかもしれませんが、一部の会社のように社内の公用語を英語にするといったところまでは実際には行えないというのが現状です。
外国人とお互いに理解する“相互理解”と同じ仲間という気持ち、またしっかり胸襟を開いて向き合うこと、一線を画さない、といったところが大事じゃないでしょうか。処遇はもちろん大事ですが、企業の規模にあった処遇をととのえて、あとはしっかりとフォローしてあげる、『Dryな処遇Wetな関係』です。」
久保島様、貴重なお話を頂き大変ありがとうございました。
株式会社ACROSEED 代表取締役 佐野 誠
社会保険労務士法人ACROSEED 代表社員 秋山 周二
「外国人社員の定着のためのポイント」
ケイラインシップマネージメント株式会社 代表取締役社長 久保島氏
●キーワード:『Dryな処遇、Wetな関係』
●日本企業の課題:『優秀な外国人を社長にする覚悟はありますか?』
Q
「外国人の定着のための貴社の取組みをお聞かせください
A
「海運業では、残念ながら船員法の規定により外国人を代表取締役に就任させることはできませんが、ふつうの平の取締役に就任させることはできます。弊社の外国人は主にフィリピン、インド、バングラディッシュです。ほぼみんな弊社の船に乗った経験がある者で、そのため日本の文化への理解は多少ありますが、住環境といったところまではわかりません。」
「フィリピンの人は日本で働くことにあまり抵抗感はなく、むしろ日本で働くことがステータスとなるようです。」
「インドの人の特徴は、子どもの教育に熱心で、家族を大切にする、そして日本で働くことは奥さんの決断が大きいようです。インドは教育水準が高く、日本に行ってもその高い教育を受けさせることができない、またはインターナショナルスクールに通わせてもその高い水準の教育を維持することが困難な状況です。そのあたりが、インドの人が日本で働くことを躊躇させることの要因となっています。
また、船長や機関長クラスのインド人は、インドでは非常にエリート階級で、メイドを数人抱えている生活です。日本ではせいぜい社宅が用意されているくらいで、インドと同様の生活水準を維持することはできません。掃除や洗濯、料理などをほとんどしない奥さまが日本でそうした家事全般をすることは、ステータスが下がることもあり、インド人夫の日本勤務に同伴することは難しいのが実態です。そのため、単身赴任のものも少なくありませんが、家族を大事にするインド人にとって単身赴任は容易ではありません。」
「バングラディッシュの人は、国旗が似ているなどの共通点など、親日家が多いのが特徴です。」
Q
「そうした状況(とくにインド人)でも、日本に来るのはなぜでしょうか?」
A
「キャリアアップです。船員にとって、船上勤務から陸上勤務になるのはキャリアアップとなり、これを最終目標とする人も多くいます。日本で陸上勤務の経験があれば、帰国した際の経歴にもはくがつき、現地であるインドの船舶会社で陸上勤務となる可能性も出てきます。」
Q
「外国人への処遇で御社が取り組んでいることをお聞かせいただけますでしょうか?」
A
「ビザの手続きや区役所の手続き、社宅の手配など手取り足取りしてあげています。こうした手続きは外国人にとって非常に煩雑になりますので、身の回りのことをすべてしてあげています。社宅では家具もすべて完備しています、電気・ガス・水道といった光熱費以外は会社負担となっています。医療費も自己負担の3割を会社で負担しています。医療負担の上限はとくに設けていません。家族全員が歯を治療して帰国したなんてこともありました。
給料は、1年間の船上勤務をした場合とほぼ同額になるように設定し、陸上勤務になったことを理由に極端に給与が下がることを避けています。また、ネット(手取り補償)での支払いで税金も会社が負担し、支払いは為替の問題もあるため現地の銀行振込みと日本の銀行の振込みとに分け、外国人の希望を聞いて振り込んでいます。『今月はいくらを現地の銀行でいくらを日本の銀行で』のようにです。
子女教育手当も支給しています。日本人が外国へ行ったときには、このような手当がつきますので、外国人が日本に来たときも同様に支給しています。つまり、われわれ日本人が外国へ行ったときと同じ処遇にしています。」
Q
「そこまで処遇しても外国人を採用することにメリットはありますか?」
A
「あります。船員はほとんどがインド人の外国人ですので共通の言語は英語です。日本人ではあのように英語で話すことはなかなかできません。陸上勤務でもほとんどの書類は英語になりますので、日本人は辞書を引きながら書類を読んだり作成したりといったようなことがありますが、外国人はそのようなことはありません。海外メーカーとの書類のやりとりも英語ですから、効率性の面からいって外国人を採用するメリットは大きくあります。
採用は現地で行っていますが、優秀な外国人を採用するために現地の大学で「奨励金制度」を行っています。あまり多くはありませんが、いろんな国で現在120名ほどこの制度を使って優秀な外国人の確保に努めています。
Q
「現地での船員採用を行う上での重要なポイントはどのようなところでしょうか」
A
「何日も船の上で生活することになりますので、チームワークが重要です。そうした団体生活に馴染めるかどうかの協調性は必要です。」
Q
「外国人の定着という視点で、このポイントが重要だというのがあればお聞かせください」
A
「やはり、信頼関係でしょうか。
弊社の社員の8‐9割は海外勤務の経験者です。そのため、自分たちが海外に行って困ったことなど、自身の経験上わかるんですね。海外に来たときのその人の気持ちがわかるんです。その経験から〇〇へ行ってという指示も、あっ、あそこの業務は日本語だけだから行ったら困るかも、みたいにです。
日本人と同じ処遇という意味で、子どもが生まれればきちんと“のし袋”に入れて出産祝いをあげています。外国人がそのような袋に入ったお祝いをもらうことはありませんし、家族を大事にするインド人にはとても喜ばれます。」
Q
「お話しの初めのほうは、外国人の定着のためには手厚い処遇が必要かと思ったのですが、お話しを伺っているうちに、単にそうではなく、相手の立場に立ってその人の気持ちを理解することが大変重要であり、貴社では社員の海外勤務の経験が非常に役立っているようですね。」
A
「処遇は処遇でDryに行いますが、社内での待遇や接し方など関係はけっこうWetです。
人種や宗教、容姿の違いを理解することも大事ですが、相手の立場になって気を使い、手取り足取りしてしっかりサポートしてあげることがもっと重要です。」
Q
「外国人を定着させるために、最大の問題は何でしょうか」
A
「プロモート(昇進)です。いくら優秀といっても、実際には部長クラスや取締役まで昇進させることは実質上なかなかできません。会議などを英語で行うといったことも考えられますが、現実問題そこまで行うことはありません。また、年に1度は評価して点数化していますが、部署に区分された職場で外国人が突出して個人の成果を上げることは、組織上ほとんどできません。そうしたところからもやはり部長や取締役まで昇進させることはほとんどありません。マネージャークラスに就かせることはありますが、大きな権限まで与えているというわけではありません。
日本企業で外国人を社長にすることは、実質上なかなかできません。外国人を社長にする覚悟はありますか、ということです。そこが日本企業の大きな問題点だと感じています。
グローバル企業へ成長していくためにはそのような取り組みも必要になってくることもあるかもしれませんが、一部の会社のように社内の公用語を英語にするといったところまでは実際には行えないというのが現状です。
外国人とお互いに理解する“相互理解”と同じ仲間という気持ち、またしっかり胸襟を開いて向き合うこと、一線を画さない、といったところが大事じゃないでしょうか。処遇はもちろん大事ですが、企業の規模にあった処遇をととのえて、あとはしっかりとフォローしてあげる、『Dryな処遇Wetな関係』です。」
久保島様、貴重なお話を頂き大変ありがとうございました。
株式会社ACROSEED 代表取締役 佐野 誠
社会保険労務士法人ACROSEED 代表社員 秋山 周二
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